「需要統御理論」 簡単解説

物価上昇率が上がると、貸出金利も上がるから、(借り手の企業にとっては両者が打ち消し合って実質金利は変わらないので)、「物価上昇で補助金」という効果は出ないんじゃないの?
需要統御理論では、物価上昇率が上がっても、金利を上げるとは限らないのです。特に、不況のときは、金利を上げるどころか下げます。── ここが肝心なので、注意してください。
従来の考え方では、物価上昇率は景気の指標でした。だから、物価上昇率が上がれば、景気を冷やすために、金利を上げるべきでした。
しかし、需要統御理論では、物価上昇率は消費の促進剤です。だから、不況のときには、物価上昇率を高めに誘導するために、金利は低めにするべきなのです。物価上昇率が高くなったからといって、金利を上げたりしないのです。(不況のときは。)
具体的な例としては、2001年秋の米国があります。このとき米国は、ある程度金利を下げたあと、なすすべがなくなっています。そうして不況の状態を放置しています。「世界同時不況」の危険が言われているのに、手も足も出ません。なぜか? さらに金利を下げると、物価上昇が起こるので、それを怖がっているわけです。これは、従来の金融政策に従っているからです。
しかし、需要統御理論に従えば、さらに金利を下げるべきなのです。そうすると、過剰な資金が出回って、物価上昇率が高くなりますが、この物価上昇によって消費が促進されるので、不景気から脱することができます。いったん不景気から脱したら、ふたたび物価上昇率を低めに誘導します。つまり、一時的に高めの物価上昇を甘受することで、膨大な失業者の発生という最悪の現状から脱するわけです。── なお、この際、国民には物価上昇による損失が発生しますから、減税などで国民一人一人に金を渡すことが必須です。つまり、金融政策と財政政策を、同時に行なう必要があります。
( ※ 以上は、不況のときの話です。インフレのときは、話は別で、従来通りの金融政策を採ります。つまり、物価上昇率が上がったら、金利を上げて、インフレをつぶします。

需要統御理論においては、消費を促進し不景気を撃退させることを優先するため、物価上昇率を普段よりも高めに置く。そのため普段よりも金利を低めに誘導し、物価上昇率を上げていく。

そして景気が回復してから金利を下げてインフレを潰すという順番になる。

「需要統御理論」 簡単解説

結局、景気を回復するには、需要をコントロールするのが大事だ、ということですか?
そうです。
( ※ 供給能率の改善は、長期的な効果を狙って実行するものです。景気とは関係ありません。)

需要をコントロールと言いますが、ケインズも同じことを言っていたのでは?
ケインズもまた、不況のときは需要を増やそうとしました。しかし、その需要は、「官需」(公共事業)でした。「需要統御理論」で増やそうとするのは、「民需」(個人消費)です。ここがケインズとは決定的に異なります。

ケインズのやり方でも、効果があるのでは?
効果はあります。ただ、それが足りるかどうかが、問題です。
小さな不況[景気後退]のときには、効果は十分です。(成功の実例多数。)
しかし、大幅な不況には、効果がまったく不足します。たとえば、需要が100兆円も縮小したとき、公共事業をさらに追加しようとしても、せいぜい 10兆円ぐらいしか追加できない(建設業界に追加の受け入れ能力がない)ので、ひどく縮小した需要を埋めるには力不足です。公共事業なんかでは全然足りないのです。 (失敗の実例多数。ニューディール政策や、バブル破裂後の日本など。)
ケインズのやり方で、官需を大幅に増やすとしたら、公共事業以外のものが必要となります。それは何か? 戦争です。戦争では、建設業に限らず多くの産業に支出がなされるので、大規模な支出が可能となり、官需を急速に増やすことができます。
結局、ケインズのやり方(官需増大)を取る限り、「戦争をするか、景気回復を諦めるか」の、二者択一となります。(大幅な不況のときには

現代日本においては、官需ではなく、民需を喚起する方法でなければ、大不況の克服はかなわない。