池田信夫 blog : 「情報アクセス権」は有害である

すべての地域で同じサービスを同一料金で提供するユニバーサル・サービスは、政治的スローガンとしては受けがいいが、経済的には非効率だ。

わかりやすい例でみてみよう。東京都は小笠原海底光ファイバーケーブルに100億円を投じ、そのうち66億円を政府が補助する。八丈島から父島・母島まで約800kmにわたって敷設される光ファイバーを利用する人口は約2500人。一人あたり400万円の税金が投入されるわけだが、これは小笠原諸島の人々にとっていいことなのだろうか。

もし父島で、光ファイバーと400万円の現金を選択させれば、ほとんどの人が現金を選ぶだろう。つまり彼らにとっては、光ファイバーに400万円の価値はないのだ。彼らに政府が特定の通信インフラを押しつけることによって、そのコストを負担する東京都民(および日本国民)も小笠原島民も損をするのである。

つまりナショナル・ミニマムは、通信インフラや子ども手当のような裁量的な支出ではなく、ルールにもとづく税の還付で保障したほうがいいのだ。これが負の所得税やベーシック・インカムの考え方である。日本の社会保障給付は、一般会計と年金会計あわせて年間80兆円ぐらいあるので、これをBIとして頭割りで配ると、一人あたり年60万円ぐらい。4人世帯で240万円だから、まずまずだろう。その代わり生活保護も公的年金も、土木事業や農業などの補助金もすべてやめ、厚労省と農水省を廃止すれば、財政は大幅に改善する。

 

 

なるほど、と思う点と、どうかな、と思う点あり。

先進国は今後、恒常的な低賃金&税収不足に陥る可能性が高く、
ユニバーサルサービスを小さくする方向性で動いたほうがよい、と思っているので、
インフラ整備は対象を丁寧に絞り込んだほうがよい、というのは同意。

ただ、話のたとえで小笠原を出すのは正しくないかな、とも思う。
光ファイバーの話をやめれば、小笠原の人々が400万円貰えたのかというと、
そういう話ではないから。

東京都の100億円=都民1人あたり1000円の節約、
政府の66億円=国民1人あたり60円の節約を実現させるために、
小笠原に1人当たり400万円のインフラを作ることを是とするかどうか、ということだろう。

孫正義社長は、光の道はそれだけの意義のある事業だと考えていて、
池田氏はそうは思っていない。

ただ、ネットにたっぷり浸かっている自分としては、
光の道が全国津々浦々に整備されることに意義を唱えられる立場にはない。 

正しいセーフティ・ネット - 池田信夫 blog

福祉充実と財政再建と両立させるには、非効率で不公平な社会保障システムを改革するしかない。その際の基本的な考え方は、八田達夫氏もいうように、老人とか農家などのグループによって所得を再分配するのではなく、個人の所得によって再分配を行なうことだ。老人でも何十億円も資産のある人には医療費は全額負担させてもいいし、農家の所得は非農家より高いのだから所得補償なんて必要ない。

フリードマンが半世紀前にのべたように、所得再分配はしょせん金の問題なのだから、すべて税制によって行なうべきだ。北欧で国民負担率が高くても不公平感がそれほど強くないのは、負担と給付の関係が透明だからである。ところが日本では、所属集団に依存するアドホックな移転給付が多く、自分の負担が自分の生活の安定に使われているという実感が少ないため、税率が低いのに重税感が強い。

もっとも合理的なのは、老人福祉や地方交付税や公的年金などの無原則な社会保障を全廃し、負の所得税と付加価値税(インボイスつきの消費税)と固定資産税(逃避できない)だけにすることだ。これによって厚生労働省は廃止でき、一般会計の約30%を見直すことができる。財政を再建するには、福祉支出を合理化するしかないのだ。

 

老人福祉を解体する代わりに、所得と資産を捕捉して、必要な人に必要な手当てをする制度に改革せよ、という話。

資産課税以外は、なるほど、と思った。

資産課税には反対ではないし、
流動資産に対する課税強化は無意味(流動資産に対する課税は主要国の平均に収斂するしかない)なので固定資産課税中心というのも同意なんだけれど、
これって不動産相場が下落して、キャッシュ化された資産が海外に逃避してしまいかねないのでは? とも思った。

池田氏のことだから、それこそが日本経済がだらしないことのサイン(日本経済に力があれば、為替リスクのある海外資産よりも、円で運用できる国内株式や債券が選ばれるはず)なんだから、
むしろ海外マネーが入ってくるだけの魅力を日本が取り戻すべき、みたいな感じなんだろか?

負の所得税 - Wikipedia

負の所得税: Negative income tax, NIT)とは累進課税システムのひとつであり、一定の収入のない人々は政府に税金を納めず、逆に政府から給付金を受け取るというもの。

ベーシックインカムと混同しそうなので、整理する。

負の所得税は、個人の所得から給付額を決定するシステム。
ベーシックインカムは、個人の所得に関係なく給付額が決定されるシステム。

なにかあるとすぐ「所得制限」って言葉が出てくる我が国なので、
BI推進派の人たちは、負の所得税あたりから話を進めていくと、
賛同者を増やせそう。