それでも、消費税率を 「今」上げることに反対する理由|山崎元のマルチスコープ|ダイヤモンド・オンライン
国の財政赤字だが、もともと、これは、全てを返しきってゼロにしなければならないというものではない。一定の残高の国債が存在することは、金融市場にとってむしろ必要なことだ。残高が管理できない大きさ・速さで拡大したり、高すぎるインフレ率などの弊害が出たりしない限り、財政赤字の残高が存在すること自体は問題ではない。では、弊害とは何だろうか。1つには、国債の消化が困難になって長期金利が上がることだろう。次に、国の債務が供給過剰なのであるから、国の債務の価値が下がり、これに裏付けられている通貨の価値が下がる。つまり、インフレであり、物価上昇率が高くなりすぎることだ。
さらに、日本国の債務の価値が下がるということは、円安になる弊害もあるだろう。多くの日本人が持つ購買力が低下する。しかし、第一の弊害を見ると、現在、長期金利(10年国債利回り)は0.9%を割り込んでおり、少なくとも絶対的水準としては高くない。ただし、消費者物価上昇率(3月は前年比+0.2%)に較べると、プラスの実質金利だ。日銀は1%の物価上昇目標に対する達成時期さえ言及を避けているが、実質マイナス金利の状況をつくるためには、インフレ率をもっと上げることが急務だろう。(中略)大きな問題は、インフレ率だが、これは、意見の強弱に差はあっても「低すぎて困っている」というのが共通認識のはずだ。日銀でさえ、「1%が目標」と言う。加えて、為替レートも、こちらは国民個々の立場で損得が分かれる問題だが、景気や雇用を考えると、もう少し円安の方がいいというのが多数意見ではないだろうか。「困るほどの円高ではない」という人がいるかも知れないが、「我が国は円安で困っている」と唱える人には、少なくとも近年は会ったことがない。国の累積財政赤字の最適な残高がいくらなのか、最適でないまでも弊害の小さい範囲が上限・下限共にどのレベルなのかはわからない。しかし、金利・物価・為替レートから見る限り、現在、財政再建の必要性が切迫している、つまり累積財政赤字が過大だと言える証拠はない。確かに、日本の財政赤字残高の対GDP比は大きいが、民間貯蓄の大きさ、社債など他の負債市場の未発達、などを考えると、日本の場合、政府債務に対するポートフォリオ的な需要は他の国よりもかなり大きいのかも知れない。一部の財政の専門家も含めて、金融市場に疎いと思われる増税論者は、「日本の長期金利がいきなり大幅に上昇したら大変だ」と言うが、デフレないしデフレすれすれの物価で長期金利が大幅に(3%? 4%? 5%?……)上昇したら、この魅力的な運用対象には内外の運用資金が殺到するだろう。つまり、デフレのまま長期金利が大幅かつ継続的に上昇することは考えにくい。