成長こそ最大の国益

日本のように、国債のほとんど全部が国内で消化されている場合、財政赤字の問題は、国債を持たない人に課税して、国債を持っている人に返すという、再分配の問題になる。つまり、財政赤字を減らしたところで、国全体でみれば、豊かになるわけでも、貧乏になるわけでもない

他方、財政再建をやって、経済に需要ショックを与え、成長率を落としてしまうと、国全体が貧しくなるわけだから、すべての人にとって不幸なことになる。もっとも、国債を高値(低利)で保ち、確実に償還してもらうなら、国がどうなろうと関係ないという立場の人もいないわけではないが。

言わずもがなのことだが、財政は、経済のサブシステムにしか過ぎないのだから、今日の大機小機のミストさんのように、「財政再建こそ最大の国益」というのは、明らかに誤りで、最大の国益は、「成長」でなければならない。いかに、財務官僚のお役目が財政再建であるとしても、国全体としての利益が頭にないのだとしたら、権力は与えられるべきではないだろう。

戦前、軍部が「国防は我らの役目」とばかりに、権力を振るった結果がどうなったか、語るまでもあるまい。公式的な成長率の見通しが2%を割るというのに、成長のすべてを召し上げるほどの一気の消費増税をやって、経済が無事で済むと思っているのかね。インタゲで増税無用も極論なら、一気の増税に加え、「身を切る」改革と社会保険給付の削減までするというのも極論でしかない。

最近、「財政当局に権力があるなら、こんなに財政赤字にならない」という説も流されているが、1997年のハシモトデフレで、大規模な緊縮財政の権力を振るい、日本をデフレ経済に叩き込んだために、財政赤字が深刻化したことを忘れてはならない。この反省から、財政を経済全体に位置づけるべく作られた経済財政諮問会議が、単なる「構造改革」の道具になり果てたのは誠に残念なことだった。 
現状の国債頼みの財政がいいわけではないが、
景気を破壊するほどの財政再建はすべきではない。
両者のバランスをとるべき。

牛さん熊さんブログ : イタリアはアリで日本はキリギリス、イタリア国債と日本国債の大きな違い

日経ビジネスオンラインの記事「イタリア公債も、10年前は約8割が国内消化だった」(小黒一正氏著)によると、「10年前の1997年まで、イタリア公債は約8割が国内で消化されていたことが一目瞭然だ。つまり、この時点で、イタリア公債の海外保有割合は約2割にすぎなかった。しかし、その後の10年間で急速に海外保有割合が高まり、2011年には約4割にまで上昇している。」とある。

イタリアは10年間で海外保有割合が2割→4割(2011年)に上昇し、今の苦しみに直面している。
日本国債は低金利の影響で海外投資家に見向きされなかったこともあり、国内消化が続いてきた。そのぶん、財政再建努力が後回しになっている。

もしイギリスがポンドではなく、ユーロを選んでいたら? - 内藤忍の公式ブログ

イギリスとスペインを比較すると、財政状態も政府債務もインフレーションもイギリスの方が悪い状態です。にも関わらず、スペインの国債は5.5%近くまで上昇しているのに、イギリスの国債は2.3%に低下しているのです。同じ欧州圏の国で信用力が高い国の方が金利が高い(信用が無い)というのはユーロと言う仕組みに原因があると見ることができます。

違いは自国の中央銀行を持っているかどうかです。

スペインのようにユーロを導入している国は、自国の中央銀行ではなく欧州中央銀行(ECB)がその役割を果たします。一方、ユーロを導入していないイギリスは、イングランド銀行が中央銀行として存在します。

中央銀行を持つ国は、国によって異なるいくつかの制限はあるものの、国債を中央銀行が買い取ることができる。これは、マネーサプライを増加させ、インフレの温床になるリスクがあります。特に中央銀行の立場が弱い場合はそうです。

しかし、一方で中央銀行があるということは、国債の支払い能力に対する投資家の安心感をもたらし、金利を低下させる効果もあるというのです。

もし、イギリスがユーロを導入していたら、スペインと同じ、いやそれ以上の金利になっていたかもしれません。

ではイギリスはユーロを導入しなくて良かったのでしょうか?結果としてはそうかもしれません。しかし、これが世界的なインフレの環境下だったら結果は逆になっていた可能性もあります。

お金の動きとは何ともデリケートです。単純に結果だけを見て、判断の是非を決める訳にはいかないのです。

イギリスのほうがスペインよりも状況は悪いのに、スペインよりも低金利で国債を発行できている。
それはイギリスが中央銀行を保有しているからで、デフレ圧力のある状況では、インフレファイティングできる国のほうが安心感を持たれる。

来るべき時代の衝撃に備えて、国家と個人のリスクを切り離せ(『週刊ダイヤモンド』2011/10/08号) | 橘玲 公式サイト

日本国の財政が破綻したら、理論的に、以下の3つの経済事象が発生する(これ以外のことは起きない)。

  1. 国債価格の暴落にともなう金利の大幅な上昇。
  2. 通貨が信任を失うことによる円安。
  3. 高金利と円安が引き起こす高率のインフレ。

すなわち「国家破産」後の日本は、「低金利・円高・デフレ」の現在とまったく逆の世界になるのだ。

もっとも、このすべてが同時に起きるわけではない。

最初の徴候は、国債価格が下落して金利が上昇することだ。これは財政破綻の定義で、低金利のまま円安になったり、物価が上昇したりしても、景気の回復や国の債務の減少につながるから財政破綻の引金が引かれることはない。

さらに、金利が上昇しはじめてもすぐにインフレや円安が起こるわけではない。為替市場では逆に、高金利で海外からの円買いが進み、短期的にはさらなる円高になる可能性もある。

国債価格が暴落すれば、膨大な国債を保有する金融機関は時価評価で大幅な債務超過になってしまう。本格的な円安やインフレは、この壊滅的な金融危機の後にやってくるだろう

財政破綻に備えるには、これらの経済事象に対してあらかじめ適切な保険をかけておけばいい。国債先物を売ったり、商品指数ETFを購入したり、銀行株を空売りしたり、さまざまな方法があるだろうが、もっとも簡単なのは外貨建て資産を一定程度保有することだ(その具体的な方法については近著『大震災の後で人生について語るということ』で書いているので、合わせて参考にしてほしい)。

農耕社会では、祖先から土地を受け継ぎ、それが子孫へと伝えられていく。土地を奪われれば死ぬしかないのだから、土地と人生はつねに一体化していた。その延長で、私たちはごく自然に、国家と自分の運命を同一視してしまう。

日本の財政赤字は1000兆円を超え、巷には「国家破産」の予言があふれている。だが、国家の破産はただちに個人の破滅を意味するわけではない。

年金しか生きる術のないひとたちは、国家に経済的に依存している。資産の大半が日本円なら、ひとたび円が信用を失えばその価値は大きく毀損してしまうだろう。東日本大震災で目にしたように、世界は不確実で、日常の基盤はふいに失われてしまうのだ。

だとしたら私たちにいま必要なのは、国家のリスクを個人のリスクから切り離すことだ。日本の政治に人生のすべてを託すことができないのなら、それが来るベき衝撃に備える唯一の方法になるだろう

本格的な円安やインフレは、国債価格の暴落のあとにやってくる。

国債の下落&金利上昇は一時的な円高をもたらすことがあるので、そこで外貨建て資産を一定程度保有するのがよいだろう。

金融そして時々山: 投資家に逃げ場なし

国債についていうとエコノミスト誌は英国国債の例をとり、現在の2.5%という利回り水準は1946年と同じレベルで、その時長期国債を買った人はその後28年間に実質価値ベースで国債価値の4分の3を失った(インフレと金利上昇が進行した)と述べる。また金については前回のピークは1980年だったが、その後20年間で価値は3分の2下落した。

株式については自明のことだが、重要なことはスタート時の配当利回りと配当の成長率だ。米国株を例に取ると配当利回りは1%で、配当の成長率については1.4%合わせて3.5%程度ではないか?という実証的研究をエコノミスト誌は紹介していた。

資産運用の利回り目標は、長期金利を目安にすること。
それが史上最低レベルで推移している以上、世界全体が「現金最強」時代に入ったのかもしれない。

国債非常事態のシナリオ - 経済を良くするって、どうすれば

「3年以内」の根拠は、財政当局がよく使う、国の債務が家計貯蓄を上回るという「例のもの」で目新しさはない。これは、切迫感を煽るのに手頃というだけで、いまや企業部門が大きな貯蓄主体になっていることを踏まえれば、家計貯蓄を超えたからといって、どうということはない。さて、それでは、この先、「どうなる」のだろう。

一番ハッピーで、結構ありそうなシナリオは、「何も起こらない」である。国債の保有者は、突き詰めれば、国内の高齢者である。もし、彼らが、国債を抱えたまま、寿命を迎えるとしたら、国債は相続税で回収され、それで終わりである。これからすると、「どうする」は、相続税に穴を開けておいてはいけないということになる。

次に、最も現実的なシナリオは、高齢者が徐々に貯蓄を取り崩して生活するようになり、国債を買わなくなるという事態である。こうなると、財政赤字は出せなくなるが、代わりに高齢者の消費が出てくるわけで、景気は良くなってくるだろう。問題は、消費が過熱しすぎる場合だ。その時には、冷却に絶大な力を発揮する消費税の出番である。これが財政再建になることは言うまでもない。

そして、ほとんどあり得ないのは、パニックで国債が暴落、金利が急騰することである。どんな健全な銀行でも、うわさで取り付け騒ぎが起こると破綻してしまう。こんなときこそ、日銀の出番であり、市場で国債を買い入れ、事態の収拾にあたることになる。むろん、通貨供給が過剰になり、インフレに発展する恐れがあるが、その際は増税でマネーを吸収する。

ちなみに、金利が急騰すると、利払いだけで財政が破綻するというような人もいるが、利子課税があることを忘れてはいけない。本当に、心配なら、消費税の計画を立てるより、税率を20%から25%に引き上げておくことだ。そうした工夫で、利払費以上に税収が上がるような仕組みにすることは可能なのである。

おしまいに、何よりありがちなシナリオは、財政赤字への罪悪感と焦燥感から、無理な増税と緊縮を行って、経済を縮小させてしまうことである。分母が小さくなるために、財政赤字のGDP比は、かえって高くなり、家計と企業の所得が減少し、肝心の貯蓄が消えていく。「3年以内」と焦ってやった結果がこの始末である。企業の設備投資が弱り、成長の見通しも失われ、銀行には不良債権が発生して、パニックの引き金ともなりかねない。

結局、「どうする」については、成長率や物価上昇率を見ながら、経済状況に合わせて財政再建を進めていくという平凡な結論なる。あわせて、将来に備え、法人税も含む資産課税の体系を整えておいたり、タイミング良く消費税を上げられるよう条件を詰めておいたりすることも大切である。

国債が国内で保有されているかぎり、杞憂は文字通りの杞憂だということ。

 

第273回 世紀の大実験:QE2 - 堀古英司の「米国株式の魅力」 - 楽天ブログ(Blog)

サンフランシスコ連銀が6月に示した試算によると、FF金利はマイナス5%を示しています。これは過去の物価及び雇用状況からFF金利を回帰分析したもので、式は以下の通りです。

2.1+1.3×インフレ率-2.0×失業率ギャップ(現失業率と自然失業率の差)=目標金利
2.1+1.3×1.0-2.0×(9.7-5.5)=-5.0%

もっともFF金利をマイナス5%にする事はできないので、他の方法によって、FF金利をマイナス5%にしたのと同様の効果が表れる状態にしなければなりません。今回発表されたような国債購入によってFF金利を引き下げたのと同様の効果を得るには、どのくらいの国債を購入すれば良いのでしょうか。これについてはNY連銀のダドリー総裁が10月の講演で示した、「5,000億ドルの国債購入で、FF金利を0.5-0.75%引き下げたのと同様の効果が得られる」とのガイドラインが参考になります。

という事は、現在ゼロであるFF金利をマイナス5%にするには、国債をどれだけ購入しなければならないでしょうか。あとは計算するだけですね。 3.3兆~5兆ドルという金額が出て来る筈です。これだけでもとても大きな金額のように見えると思います。しかし適正FF金利を上記の回帰分析とは異なる、(先見性が高いと言われる)テイラールールに基づいて計算すると、実はマイナス7%という数字が出てきます。すると必要国債購入額は4.6兆~7兆ドルに増加します。

もちろん量的金融緩和というのは世紀の大実験であり、このような計算通りになるとは限りませんし、大きな副作用を伴う可能性も十分あります。従って FRBとしては、やり過ぎるリスクは避けたい所でしょう。しかし上記金額の半分としても、3兆ドル近い数字が出てきます。今回取り敢えず6,000億ドルという数字が発表されましたが、こう考えると来年7月以降、さらに継続されたり、場合によっては増額されたりする可能性は十分にあるという事です。

マイナス金利にはできないから、国債を買い入れて、金融を緩和する。

筆者がいいたいのは、引用のあとの部分。
傷ついてもチャレンジすることを選ぶ米国と、
座して死を待つ日本の差。

ある財政破綻のシナリオ--池尾和人 : アゴラ

むしろインフレ期待の発生が財政破綻のトリガーを引くことになりかねないと考えられます。
すなわち、インフレ期待が生じると、既存の国債保有分については、インフレによる損失を回避するために、その前に売却しようという動きが生じることになります。これは、国債価格の暴落=長期金利の急騰につながります。投資家が、何もせずに、インフレによる債務の実質カットを甘受し続けることはありえません。

このことを避けようとして、日本銀行が買いオペをして代わりに現金を供給しても、インフレで価値が低下することが分かっている円をキャッシュのままで持ち続けようという者はいないはずですから、外貨建て資産や実物資産への転換が図られることになります。前者であれば、円安を招くことになって、輸入物価の上昇につながります。

こうしたことから、インフレ・スパイラルに陥る可能性が高く、安定的に穏やかなインフレ状態を続けることは難しいと思います。

かりに穏やかなインフレ状態が続くということになっても、その場合にも、固定利付きの長期国債の発行は難しくなります。物価連動債にするか、債務の短期化を強いられます。引き続き固定利付きの長期国債が発行できたとしても、フィッシャー効果で名目金利はインフレ期待分上昇しますから、借り換えと新規発行分の政府の負担は軽くなりません。インフレになると、税収が増える効果もありますが、歳出の名目額も拡大せざるを得ないので、財政赤字は続きますから、政府は国債の借り換えと新規発行を続けなくてはなりません。

インフレにすることで政府債務を帳消しに出来るという理論への牽制。

インフレになりそう=その前に国債を売ってしまおう=金利の急騰=政府の国債の借り換えが困難になる

財務省あたりはコレを懸念して、デフレを放置してるのかもしれません。

【経済コラム】日本国債に現実逃避のマネーが流れ込む-W・ペセック - Bloomberg.co.jp

日本国債に対する投資家の信認の一部は、市場の暴落を回避する財務省の一種の魔法の力によって支えられている。それは日本国債の90%以上を国内の投資家が保有する状況に寄与する一方、官僚はヘッジファンド運用者の多くを屈辱的な気分にさせている。

  しかしながら、国債利回りが1.2%を下回れば、事態は不安定になる。日銀がデフレに対抗する量的緩和策で国債買い入れを増やした2003年6月に、10年債利回りは過去最低の0.43%を記録した。だが、財政に対する投資家の不安を反映し、利回りはその後9月までに1.6%に押し上げられた。この国債の大量の売りを投資家は忘れないだろう。

日本政府の国債発行残高は世界の中でも最悪なのに、
金融危機がくると、世界中のお金が安全を求めて日本に殺到するというパラドクス。
その矛盾が解消される日も近いかもしれない。

インフレとデフレが並存する経済~G20を受けて |  金融市場Watch Weblog

さらにクルーグマン教授は緊縮財政は短期的に債券投資家を喜ばせるだけで、それらの国々をデフレにさせて、失業率を増大させるという危険性を説いている。これは昨日に取り上げたジョージ・ソロス氏と似たような論調かもしれない。但し、このような論調に関して、個人的な見方としては少し単純すぎるかもしれない、という感じを抱く。クルーグマン教授の意見では、現状の問題がデフレ的な現象(物価下落)とインフレ的現象(金利上昇・クラウディングアウト)が同時平行的に進行する経済だったとしたらどうすればよいのか?という処方箋は示されていない。

スペインの場合であれば本来なら重債務国なのでインフレに陥る(クラウディングアウトを引き起こす)のがセオリーだが、同国の物価は民間債務に起因した慢性デフレ、すなわち民間負債の大きさに起因する需要不足という問題も指摘されている(ロイター「焦点:物価下落でスペインに忍び寄る慢性デフレの影」参照)。分かりやすくイメージすると、住宅バブルが民間債務の肥大化を招き、リセッションによって債務返済による消費の低迷、さらには需要不足による物価下落バイアスがかかっている。さらに住宅市場では供給過剰の状態となり、資産価格の下落を招いている。一方で政府は金融危機の際、銀行システムを維持するために財政支出を行うが、その見返りとして公的債務も肥大化してしまった。公的債務に対する懸念、すなわちデフォルトリスクからソブリン債が投げ売られ、金利が上昇する。そして金利の上昇から民間セクターのファイナンスもままならない。このような構図だろう。

上記のような経済において日本のように金利に低下バイアスがかかれば景気刺激策も有効かもしれない。しかし、金利を低下させるプロセスはECBによる国債買い入れ(信用緩和)もしくは財政再建の2つくらいしか思い当たらない。一方で緊縮財政を取ればデフレのリスクも大きくなっていく。従ってこの問題は二項対立として扱うべきではなく、優先順位を決めて問題にとりかかるしか無いのではないか、と思われる。その場合は金融市場の緊張こそが判断材料の一つになるのではなかろうか。端的にいえば国内の銀行のリファイナンスであろう。

 

 

グルーグマン教授の論説は以下の通り。

財政再建路線にはデフレのリスクがあり、
経済再建路線にはインフレのリスクがある。
インフレとデフレが併存する状況下において、
G20がすべて財政再建路線に向かうべきではなく、
重病国家のみが緊縮財政を図り、他の国は経済再建を優先するべき。
重病か否かの指標としては、金融市場の緊張=銀行のファイナンスを見るのがよい。

それに対して、筆者はスペインのように、
政府はインフレ、民間がデフレに向かうような状況に陥っているケースもある、と説いている。
金融緩和が出来れば、景気刺激も可能だが、
ユーロに組み込まれているスペインでは、ECBの国債買いと自国の財政再建の2つでしか金利を下げることが出来ないので、財政再建政策をとらざるを得ない。