その間、高福祉社会で有名なスウェーデンは、政府、労働組合、企業が密接に協力しあい、高福祉の原資としてGDPの50%近い税金を賦課する類いまれな高福祉、高負担の国家を形成していました。
それにも拘らず、GDPの下落、雇用の減少は止まらず、永年続いた高福祉コストの更なる上昇が国の財政を直撃し、1994年には政府予算の歳入不足はGDPの15%にも達する危機的状況を迎える事となりました。
この状況は、バブル破裂後の「失われた10年(20年?)」のわが国の事情に極似していますが、スエーデン政府は公的支出の徹底削減と飽くなき構造改革を通じて競争力を強化する方針を徹底的に遂行し、IT産業の急激な成長に支えられて世界経済が好転し始めた2000年代に入ると、自由化と構造改革で強化されたスウェーデンの国際競争力が遺憾なく発揮され、世界が羨む健全な経済国家に戻りました。
日本も小泉改革をもう少し辛抱強く進めていたら、現在の危機的状況は避けられたのではないかと思うと残念な気もします。
「スウエーデンモデル」と言われる改革路線は、弱体傾向にあった国家競争力を、法人税の減額や自由化を通じて強化し、高福祉を維持しながら雇用を拡大する事を目標としていました。この自由化の対象は経済に留まらず、移民政策の大幅な緩和など、国民の価値観の転換も必要とする徹底振りで、文化革命的な要素も持っていました。
この成功にも拘らず、2006年の選挙で勝利した穏健右派政権は、雇用増に役立たない多すぎる公務員を抱え、国民の手取りが給与の半分にもならない国家の非効率を改革させる期待を込めて、当時38歳のアンドレ・ボルグ氏を財務相に抜擢しました。彼はその期待に応えて、福祉制度を民営化して公務員中心の社会民主主義的福祉国家を解体し、高すぎる福祉水準を適正水準に戻して勤労意欲を向上させ、減税を通じて起業環境の整備を計りました。この「雇用第一、福祉第二」の政策は、スウェーデン経済を短期間に強固な筋肉質に変へ、今回の金融危機の悪影響が最も少なかった国と言われています。
今年42歳になったばかりのボルグ財務相は、欧州の経済紙とのインタビューで、「福祉と雇用の2兎を追う時代は終り、雇用、雇用、雇用の時代となった。何時までも、高福祉、低負担の夢想を捨て切れなかったギリシャ、ポルトガル、スペインなどが、財政危機を迎える事は当たり前だ。」と国民の「無いものねだり」に追随してきた南欧3国を厳しく批判し、返す刀で「米国の経済政策もいずれ破綻する」と国民の人気を気にするオバマ大統領の2兎追い政策を批判しています。
(中略)
経済に素人の私ですが、「増税で集めた金を、需要と雇用を創出し社会保障を強化する分野に政府が適正に投入する」と言う菅首相の方針には賛成出来ません。理由は、日本政府や官僚には成功体験が無い事と「社会主義」と言う官営投資は全て失敗に終っているからです。これでは、一度も成功体験のない起業家に巨額の投資を任せるようなものです。