日銀の複雑な思いと「アコード」の意味 --- 長谷川 公敏 : アゴラ - ライブドアブログ

先進各国では既に政策金利が所謂「ゼロ金利」に近いため、中央銀行の金融緩和策は政策金利の引き下げではなく、主に「量的緩和策」になっている。そのため市場では、中央銀行による金融緩和の度合いをマネタリー・ベース(ベース・マネー)で見ている。

■マネタリー・ベースとは

マネタリー・ベースは現金通貨の残高と、市中金融機関の中央銀行への預金残高(当座預金残高)を合計したものだ。

まず現金通貨(日本では日銀が発行する紙幣と財務省が発行する硬貨)だが、基本的には経済成長に伴う需要の増加で増えるものの、クレジットカードなどの普及で現金需要は増えにくくなっている。

次に当座預金だが、当座預金は市中金融機関の預金残高に対応した準備預金と、市中金融機関の余剰資金の合計だ。このうち、準備預金は市中金融機関への預金の増え方が緩慢なのでさほど増えない。

一方、リーマンショックの後遺症で、押しなべて企業などの資金需要が低迷していることから、金融緩和策で中央銀行から市中金融機関へ供給されたおカネの大部分は、余剰資金として中央銀行の当座預金口座に積み上がることになる。

■量的金融緩和の効果

このように見てくると、マネタリー・ベース残高の増減は、概ね金融緩和に伴う市中金融機関の余剰資金動向に左右されることになる。もちろん、中央銀行による資金供給の増加は、政策金利の影響が及びにくい期間が長めの市場金利を押し下げる効果があり、景気を押し上げる心理的な効果もある。だが冷静に考えれば、資金需要がない中で、主に余剰資金を増やすことになる金融政策は、さほど意味がないように見える。

しかし繰り返すが、市場は中央銀行の金融緩和の度合いをマネタリー・ベースの増減(≒余剰資金の増減)で見ている。特に為替市場では、日本の「マネタリー・ベースの増え方が鈍い」ことを円高の理由にしているため、円高の悪影響が大いに懸念されている中で、日銀としては「意味がないので、金融緩和は不要」という立場は取りにくい。

 

 

 

 

 

 

 

資金需要がない状況で金融緩和をしても効果は弱いが、マネタリーベースが増えると市場は円を売りにかかるので、円安→製造業の復活、といった効果は期待できる。

エコノミック レポート(2012年11月14日 政権が代われば円安は進むか?)/マネックス証券

本日(11月14日)日経新聞、「安倍トレード膨らむか」という記事では、「安倍総裁が首相になる展開が視野に入り、長期金利が上昇する」との債券市場の観測が紹介されている。具体的には、政治が変わる局面で「財政規律が失われるとの懸念」が、悪い金利上昇をもたらす側面が強調されている。

ただ、8月8日レポート「政治の迷走と日本売り懸念」などでも述べたが、日本の財政規律を巡る思惑で、「金利だけ」が上昇する局面があってもそれは一時的な動きである。この記事が指摘する、安倍政権誕生で「金融緩和強化+緊縮財政(増税)先送り」となれば、日本の脱デフレが早まるシナリオが浮上する。つまり別の経路で長期金利に上昇圧力がかかり、そうであれば株高や円安も起きる。

さて、こうしたシナリオを察知しているお客様から、昨日のセミナーで冒頭に紹介した「自民党政権誕生で、円安や日本株高はどこまで進むのか?」という質問を頂いたわけだが、それに対して筆者は以下のようにお答えした。「安倍総裁がふさわしいと考える日銀総裁が誕生すれば、今年2月から3月にかけて実現したような、円安そして株高が再現してもおかしくないと思います」(グラフ参照)。

 

 

 

 

問題は自民党勢力がどの程度の議席を確保できるか、だろう。
自公で過半数をとれればよいが。

量的緩和は景気を悪化させる | 行動ファイナンス小幡績 | 東洋経済オンライン | 新世代リーダーのためのビジネスサイト

実物市場へ投資する場合には、一定のコストがかかり、リスクもある。だから、調達金利がどんなに低くても、たとえば、ゼロ金利で調達しても、0.5%で貸すわけにはいかず、どんなに低くても本当は2%から3%は必要なところだ。

さらに、日本の低金利は長期に継続しているから、優良な住宅ローンも優良企業も、もう残っていない。とことん貸しつくしているからだ。そうなると、ある程度リスクのあるところに貸さざるを得ない。そうなると、2%でも難しく、ビジネスとして成り立たせるためにはたとえば4%の金利が必要になる。しかし、それでは誰も借りてくれない。さらに、これまでの融資先の大半を占める優良企業は自分で直接、資金調達できるようになっており、融資の拡大どころか、減少となり、ますます銀行の基盤は減り、資金の運用先を探すのに苦労するようになっている。

このような状況で、量的緩和をするとどうなるか。

量的緩和(現在の量的緩和、日銀の量的緩和のオリジナルは異なることに注意が必要だ)とは、金融商品を中央銀行が買うということである。だから、証券市場で金融商品の価格は上昇する。これが量的緩和の本質で、それ以上でもそれ以下でもない。

今後さらに量的緩和が進むと皆は思っているから、金融機関を含む投資家は、資金を証券市場の金融商品にさらに回す。値上がりした金融商品はさらに値上がりする。つまり、金融商品の利回りは低下する。しかし、今後も投資資金が回ってくるから、さらなる値上がりによるキャピタルゲインが狙える。少なくとも値下がりリスクが減る。こうして、中央銀行の「買い」が、投資家の「買い」を呼び、債券も株も、そしてコモディティも、金融商品は継続的に値上がりし、長期金利やリスクプレミアムは低下する。

企業が生産活動を活発化させるのはあくまで実需であり、実需対策なき金融緩和には意味が無い、ということ。そんな状態で金融緩和だけを行うのは返って有害、という話。

財政の崖(フィスカル・クリフ)とは | お金と経済のいろいろ

2000年代に始まった所得税などに対する大型減税策、いわゆる「ブッシュ減税」が2012年末に期限切れ。

そして、2011年にアメリカの債務上限が問題になった際に2013年1月からの強制的な予算削減が決まっている。
(国防費を中心に10年間で最大1兆2000億ドルの歳出が強制削減)
2013年から、減税が切れ「実質的増税」と「強制的な歳出削減」のダブルパンチで崖から落下するような急激な財政の引き締めが起こってしまう可能性があること
減税と歳出削減が同時に起これば、2013年1月から最大約4100億ドル(GDP比2.7%)の財政緊縮となる。
ブッシュ減税:最大2000億ドル
給与税減税:約1000億ドル
歳出カット:約1100億ドル

アメリカの議会予算局は「2013年前半に、景気後退局面に陥る。」
としていて、
FRBバーナンキ議長も、財政の崖に対して警戒感を示しており、6月に何らかの追加緩和策を打ちだすと見られる。

今後の状況は、11月の大統領選、議会選挙によって左右される。
連邦議会選挙では、下院全435議席、上院が100議席のうち1/3が改選される。
現時点で議会選挙は、共和党が有利でブッシュ減税がすべて終わってしまう事態にはならなさそう。
しかし、選挙が終わってから年末までに政治的決着は困難との見方もあり、一時的に「財政の崖」が起こってしまう可能性もある。

11月まで、まだまだ相場の乱高下が起こりそうですね。

 

サルから見た消費税(1)

最近の欧州の様子を見ていると、「緊縮財政こそが善」という風潮が変化してきているように思う。財政赤字の削減は必要でも、マイナス成長に落ちるようでは、市場から成長力を不安視されて、かえってリスクプレミアムが高まるし、マイナス成長では、ただでさえ脆弱になっている金融システムが持たなくなる。日本は、このまま行くと、欧州での実験の失敗が明らかになったところで、同じ轍を踏むことになりかねない。
おそらく、これからの議論は、成長を阻害しないほどの緊縮財政がどの程度のものかという平凡なものに向かうだろう。もしかすると、米国で「財政の崖」という壮大な実験の結果も参照できるかもしれない。その点で、日本の財政当局は、早急なプライマリーバランスへの回復を至上命題としているが、既に、成長率を落としたイタリアでは、PBが黒字でも危機になることが分かった。本質は、そこではないということだ。

欧州が教えてくれるのは、成長と財政再建の両立を粘り強く求めていかなければならない、という現実。

ケインズ政策の内実

その昔、「公共事業はムダだから、代わりに中高生の全員にパソコンを配ってはどうか」という珍説があったが、兆円単位でパソコンを供給するのは無理だし、できたとしても、需要の急増急減によって業界を壊してしまう。企業で購買を担当されている方なら御存知だろうが、個人と違いマクロでは、カネさえ出せば供給を受けられるというものではない。
………
ケインズ政策で大事なことは、途中で抜かないことである。ケインズ政策の真価は、底を作ることだからだ。1930年代の大恐慌の教訓は、財政まで赤字から逃げると、文字通り、経済の底が抜けるデフレスパイラルに陥ることだった。そこまで極端でなくても、ちょっと良くなったところで財政再建に走り、二番底をつけるのは、いまだに繰り返される悪手である。「ケインズ理論に効果なし」といった過小評価が陥る罠と言えよう。

(中略)

昨日の経済教室で日経センターの愛宕伸康さんは、「企業は売り上げが振れるほど、設備投資を削減する」と指摘しているが、ケインズ政策のポイントは、需要の底を作り、安定させることである。これが企業のリスク感を癒し、成長への期待を与え、設備投資を呼び覚ますのである。即効を求めてもいけないし、忍耐強さも欠かせない。ケインズ政策の内実とは、このようなものなのだ。

(中略)

欧州にしても、南欧における財政再建で、マイナス成長を呼ぶようではやり過ぎである。ドイツの長期金利の異様な低さは、ドイツが欧州のために、需要を下支えしたり、投資をしたりすべきことを示している。米国について言えば、忍耐を重ねて、何とか緩い回復へと持ち込んだのに、共和党は、これを壊すような「財政の崖」を用意しようとしている。


政府は業界を破壊してはいけない。
エコカーやエコポイントの助成も、中途半端なところでやめたために、その後、売上が急減、業界の設備投資意欲をしぼませることになった。
ケインズ政策はやりすぎもダメだが、ケチすぎてもダメ。

企業悪玉論を超えて

1997年のハシモトデフレで自分でデフレに突っ込み、ゼロ金利となって金融政策という手段を失ってしまった日本が、財政政策の自由まで捨てているなら、米国の経済に連動することになるのは、ある意味、当然である。そうであれば、日米で物価上昇率が連動するのに何の不思議さもない。

実際、1993年に景気が底入れして以降、日本の景気は輸出に完全にパラレルになった。輸出と設備投資の相関は恐ろしいほどだ。これは、戦後の日本経済の歴史の中では異常な事態である。なぜなら、輸出から内需へと景気が波及していくパターンが通例だからだ。そうならなかったのは、輸出が増えると、財政を緊縮させ、波及を断ち切ることを、わざわざしていたからである。

輸出に景気を委ねてしまえば、日米の景気は連動するし、輸出型企業がライバルの米国企業の収益率を意識するのも自然だろう。また、それに影響を受けないはずの内需型企業にしても、財政で内需が潰されているのだから、低収益の事業を膨らませて、量で収益を大きくするわけにもいかない。収益を増やすには合理化一辺倒になる。こうして、内部留保は積み上がっていく

企業が高収益を目指し、投資を絞っているのは、ミクロ的な志向の集積というより、マクロ政策への適応の結果なのである。したがって、共産党のように、課税によって大企業から内部留保を取り上げれば良いというのではなく、それが投資に向かうような経済環境を作ってやるべきだろう。少なくとも、政府がスキあらば緊縮を狙うような状況では、設備投資、特に低収益のそれは、とても怖くてできないのである。


すきあらば内需を潰そうとする日本政府のもとでは、
企業は設備投資に二の足を踏んでしまう。

牛さん熊さんブログ : ギリシャ国民によるユーロ離脱の選択の可能性

ギリシャの国民としてはどちらを選択すべきかは言うまでもない。あえて価値の下落が見えている新通貨への乗り換えは、さらに経済を悪化させよう。日本では戦後、新円切替が実施されたが、これは戦後のハイパー・インフレーション対策としてのものである。これに対して、もしギリシャがユーロから新ドラクマに乗り換えるとするのであれば、日本の新円切替とは真逆のことになる。あえて通貨価値の高いものから低いものに乗り換えるという事態となり、それはさらなる経済の混乱をもたらすことになろう。

ギリシャのドラクマ化は、従来の通貨切り替えとは異なる

それでも、消費税率を 「今」上げることに反対する理由|山崎元のマルチスコープ|ダイヤモンド・オンライン

国の財政赤字だが、もともと、これは、全てを返しきってゼロにしなければならないというものではない。一定の残高の国債が存在することは、金融市場にとってむしろ必要なことだ。残高が管理できない大きさ・速さで拡大したり、高すぎるインフレ率などの弊害が出たりしない限り、財政赤字の残高が存在すること自体は問題ではない。

では、弊害とは何だろうか。

1つには、国債の消化が困難になって長期金利が上がることだろう。

次に、国の債務が供給過剰なのであるから、国の債務の価値が下がり、これに裏付けられている通貨の価値が下がる。つまり、インフレであり、物価上昇率が高くなりすぎることだ。

さらに、日本国の債務の価値が下がるということは、円安になる弊害もあるだろう。多くの日本人が持つ購買力が低下する。

しかし、第一の弊害を見ると、現在、長期金利(10年国債利回り)は0.9%を割り込んでおり、少なくとも絶対的水準としては高くない。ただし、消費者物価上昇率(3月は前年比+0.2%)に較べると、プラスの実質金利だ。日銀は1%の物価上昇目標に対する達成時期さえ言及を避けているが、実質マイナス金利の状況をつくるためには、インフレ率をもっと上げることが急務だろう。

(中略)

大きな問題は、インフレ率だが、これは、意見の強弱に差はあっても「低すぎて困っている」というのが共通認識のはずだ。日銀でさえ、「1%が目標」と言う。

加えて、為替レートも、こちらは国民個々の立場で損得が分かれる問題だが、景気や雇用を考えると、もう少し円安の方がいいというのが多数意見ではないだろうか。「困るほどの円高ではない」という人がいるかも知れないが、「我が国は円安で困っている」と唱える人には、少なくとも近年は会ったことがない。

国の累積財政赤字の最適な残高がいくらなのか、最適でないまでも弊害の小さい範囲が上限・下限共にどのレベルなのかはわからない。しかし、金利・物価・為替レートから見る限り、現在、財政再建の必要性が切迫している、つまり累積財政赤字が過大だと言える証拠はない。

確かに、日本の財政赤字残高の対GDP比は大きいが、民間貯蓄の大きさ、社債など他の負債市場の未発達、などを考えると、日本の場合、政府債務に対するポートフォリオ的な需要は他の国よりもかなり大きいのかも知れない。

一部の財政の専門家も含めて、金融市場に疎いと思われる増税論者は、「日本の長期金利がいきなり大幅に上昇したら大変だ」と言うが、デフレないしデフレすれすれの物価で長期金利が大幅に(3%? 4%? 5%?……)上昇したら、この魅力的な運用対象には内外の運用資金が殺到するだろう。つまり、デフレのまま長期金利が大幅かつ継続的に上昇することは考えにくい。


デフレ対策と消費税増税は矛盾している。
であるなら、緊急性の高いデフレ対策(景気対策)に優先順位を置くべき。

成長こそ最大の国益

日本のように、国債のほとんど全部が国内で消化されている場合、財政赤字の問題は、国債を持たない人に課税して、国債を持っている人に返すという、再分配の問題になる。つまり、財政赤字を減らしたところで、国全体でみれば、豊かになるわけでも、貧乏になるわけでもない

他方、財政再建をやって、経済に需要ショックを与え、成長率を落としてしまうと、国全体が貧しくなるわけだから、すべての人にとって不幸なことになる。もっとも、国債を高値(低利)で保ち、確実に償還してもらうなら、国がどうなろうと関係ないという立場の人もいないわけではないが。

言わずもがなのことだが、財政は、経済のサブシステムにしか過ぎないのだから、今日の大機小機のミストさんのように、「財政再建こそ最大の国益」というのは、明らかに誤りで、最大の国益は、「成長」でなければならない。いかに、財務官僚のお役目が財政再建であるとしても、国全体としての利益が頭にないのだとしたら、権力は与えられるべきではないだろう。

戦前、軍部が「国防は我らの役目」とばかりに、権力を振るった結果がどうなったか、語るまでもあるまい。公式的な成長率の見通しが2%を割るというのに、成長のすべてを召し上げるほどの一気の消費増税をやって、経済が無事で済むと思っているのかね。インタゲで増税無用も極論なら、一気の増税に加え、「身を切る」改革と社会保険給付の削減までするというのも極論でしかない。

最近、「財政当局に権力があるなら、こんなに財政赤字にならない」という説も流されているが、1997年のハシモトデフレで、大規模な緊縮財政の権力を振るい、日本をデフレ経済に叩き込んだために、財政赤字が深刻化したことを忘れてはならない。この反省から、財政を経済全体に位置づけるべく作られた経済財政諮問会議が、単なる「構造改革」の道具になり果てたのは誠に残念なことだった。 
現状の国債頼みの財政がいいわけではないが、
景気を破壊するほどの財政再建はすべきではない。
両者のバランスをとるべき。