2010-04-14 - Irregular Economist ~hicksianの経済学学習帳~
2002年以前における労働生産性の上昇は実質賃金の上昇によって完全に打ち消されることになった。問題は、1994年中に企業収益が十分回復しなかった、ということにある。通常の景気循環の過程では、景気拡大の初期の段階には実質賃金が相対的に減少し、企業収益は大幅に増加するものである。1980年代までは、まさしくこのようなかたちで調整が進んだものである。名目賃金の上昇は1997年に入るとストップし、下落を始めることになった。この時デフレーションが生じていなければ、企業収益は名目賃金の下落を受けて増加を見せたはずである。しかしながら、実際のところはデフレが生じていたために、実質賃金は2002年まで上昇し続けることになった。こうして、1%程度のマイルドなデフレーションが(実質賃金の高止まりを通じて;訳者注)企業収益の堅調な回復を妨げることになったのである。
1994年に始まったGDPデフレーターの低下は、名目賃金の下落の効果を完全に打ち消すことになった。デフレーションは実質賃金の上昇を引き起こすことで企業収益を圧迫し、また、株価を含んだ資産価格の回復を妨げることになった。企業収益の弱々しい回復を受けて、設備投資はすぐにも減少を見せることになった。さらには、金融機関ならびに一般事業法人のバランスシート上における純資産は、株価が下落したことにより、そして間接的なかたちではあるものの設備投資が減少したことにより、減少することになった。こうして、企業活動はさらなる低迷を経験することになり、2001年の下半期に入ると失業率は5%にまで上昇することになった。1997年に失業率が3%を超えたことを受けて名目賃金が下落に転じたように、失業率が5%もの高水準に達したことよって、名目賃金は大幅な下落を見せ、ついには、実質賃金を下落させる事態にまで至ることになった。名目GDPは増加しなかったものの、実質賃金が下落したことによって、企業部門の収益は増加することとなった。そして、デフレーションは依然として続いたものの、(企業収益の伸びの回復を受けて;訳者注)資産価格の上昇と設備投資の増加とが続くということになったのである。
マイルドなデフレが経済停滞を引き起こすのはなぜか? という説明。