金融政策ルールとマクロ経済の安定性:日本銀行
経済の先行き予測に基づいて政策運営を行うフォワードルッキング・ルール(forward-looking rule)は、経済の足許の動きのみに基づいたバックワードルッキング・ルール(backward-looking rule)に比べ、マクロ経済(インフレ率、GDPギャップ、金利)の安定性をもたらす。この意味で、フォワードルッキング・ルールは、効率的な政策ルールといえる。
フォワードルッキング・ルールに基づいた政策運営を遂行する際には、物価安定に強くコミットすることが重要で、景気安定のウェイトを高めるとかえって経済を不安定化させる。特に、民間部門の期待形成が先見的(forward-looking)になればなるほど、景気安定にコミットすることのデメリットが大きくなる。これは、中央銀行が景気に振られやすいことを民間部門が織り込んで先行きを予想するので、インフレ期待が不安定化し、実質金利の不安定化に繋がるためである。この結果、インフレ率のみならず、景気も最終的には不安定になる。
フォワードルッキング・ルールに基づいた政策運営においては、様子をみながら、インフレ予測を徐々に金利変化に反映させるという慎重な政策対応(金利スムージング)を行うことが、マクロ経済の安定性の観点から望ましい。
これは、中央銀行のインフレ率予測には誤差を伴わざるを得ないため、予測値を確実視した対応をとると、事後的には誤った政策対応となるリスクがあるためである。
こうした点は、バックワードルッキング・ルールにおいて、金利スムージングの度合いを高めると、経済を不安定化させるのと対照的である(バックワードルッキング・ルールにおいて、スムージングの度合いを大きくすると、過去の情報に引きずられすぎて緩慢な政策対応をとる結果、政策が後手後手に回り経済が不安定化する)。
為替レートの安定化を金融政策の直接の目的とすると、マクロ経済の安定性を大きく損なう。
これは、為替安定のために中央銀行が政策金利を変動させるようになると、需要ショックや供給ショックに対する物価や景気の変動を放置することにつながり、最終的には金利の乱高下というかたちで、経済にネガティブな影響を及ぼすようになるためである。
目標インフレ率の設定と金利のゼロ制約を考慮すると、金利の安定性は、政策ルールの評価基準として重要な尺度である。
なぜなら、物価と景気の安定性を高める政策ルールであっても、金利の安定性が低いルールでは、目標インフレ率が低くなると金利のゼロ制約を受ける確率が高まり、最終的には、物価と景気の安定性までも毀損されることになるためである。
したがって、金利のゼロ制約を回避しつつ、できるだけ低い目標インフレ率を掲げた政策運営を行なう場合には、バックワードルッキング・ルールよりも、金利の安定性の高いフォワードルッキング・ルールの採用が望ましいと考えられる。
しかし、潜在成長率が低い環境下では、効率的なフォワードルッキング・ルールを採用しても、目標インフレ率をゼロに設定すると、金利のゼロ制約を受ける確率を高め、マクロ経済を不安定にする可能性がある。
非効率的な政策ルールを採用した場合には、金利をより不安定化させるために、ゼロ制約を受ける確率はさらに上昇する。
via boj.or.jp
これも勉強Post。
中央銀行がフォワードルッキングな金融政策をすることには有用性がある。ただし、予測値には誤差がつきものなので、インフレ予測を一気に織り込むのではなく、徐々に金利変化に織り込んでいくカタチがよい。
中央銀行は景気安定よりも物価安定を重視したほうがよい。中央銀行が景気安定を意識しすぎると、マーケットがそれに振り回されやすくなり、金融政策が不安定になりやすい。
中央銀行は為替レート安定化のために動くのはよくない。為替安定のために政策金利を変動させると、需要や供給に対する物価変動、景気変動を放置することにつながり、最終的に金利の乱高下というカタチで経済にネガティブな影響を与えてしまうから。
中央銀行はまず金利の安定性に重きを置くべきである。金利の安定性が低いと、目標インフレ率が低い時に金利のゼロ制約を受ける確率が高まり、かえって物価と景気を不安定にさせてしまいやすいから。
なので、金利のゼロ制約を回避しつつ、できるだけ低い目標インフレ率を掲げた政策運営を行う場合には、金利安定性の高いフォワードルッキングルールの採用が好ましい。
ただし、潜在成長率が低い経済では、目標インフレ率を高く設定しないと、ゼロ制約を受ける確率を高めてしまう。
なのに、この文書の続きでは、インフレターゲット政策には否定的な文言が続いている。
むう。